株式譲渡は簡単にできてしまうと思われている方が多くいらっしゃいます。

中小企業の株式の譲渡は、会社関係者、役員の間で行われることが多く、知り合い同士の取引であるため、口約束の合意だけとか、契約書を作成したとしても形式的なもので、ネットにあるひな型をつかったものしかないという事が多いのではないでしょうか

株式譲渡の際は円満に取引ができても、敵対的な関係となってしまった場合には、手続きの不備によりトラブルになる可能性もあります。

IPOM&Aによって株価が数百倍ともなるベンチャー企業の株式は、特に注意が必要です。

 

株式譲渡にあたりチェックするポイント

①株式に譲渡制限はついてるか

株式会社の株式には、譲渡制限がついている会社の株式と、譲渡制限のついていない会社の株式の2種類があります。
簡単にいうと、上場企業の株式には譲渡制限がついていません。上場会社を除く大多数の会社の株式には譲渡制限がついています。

 株式会社の成り立ちとして、株式は自由に譲渡することができるというのが本来の姿です。しかし、会社にとって好ましくない者が株主になることを防止するために、株式の譲渡に制限をかけることが認められています。

譲渡制限のついた株式を譲渡する場合には、会社に対して譲受人に譲渡することにつき承認するかいなかの問合せが必要になります。

 ②譲渡の承認はだれが行うのか

譲渡の承認は誰が行うか(譲渡承認する機関はどこか)という事は会社の登記事項証明書(登記簿謄本)を見ることで確認することができます。

 譲渡承認の機関は、会社法の原則では、取締役会のある会社では、「取締役会」、取締役会のない会社では「株主総会」となっています。
譲渡承認の機関は、会社が独自に定めることも可能ですので、「代表取締役」譲渡承認の機関とすることも可能です。

登記簿謄本の記載例
当会社の株式を譲渡により取得するには、株主総会の承認を受けなければならない。

③株券発行会社であるかどうか

株式会社が株券を発行する会社とするかどかは任意に決めることができます。
また、株券発行会社であるかどうかという事は会社の登記事項証明書を見ることで確認することができます。
会社法の規定では、株券を発行しない会社(株券不発行会社)が原則となっており、株券を発行した場合には、株券を発行する旨を定款に定める必要があります。 

株式譲渡の手続きにおいては、株券発行会社であるかどうかという点は重要な違いとなります。株券発行会社の株式を譲渡する場合には、必ず株券の交付が必要となるからです。

登記簿謄本の記載例
当会社の株式については、株券を発行する。

株券発行会社でない場合には、株券を発行する旨の定めという欄が存在しません。

株式譲渡手続きの流れ

 1 譲渡の合意

譲渡の当事者間で譲渡する株式数、譲渡価額、譲渡時期など取引の大枠を合意します。

知り合い同士の取引の場合には、株式譲渡について会社の内諾を得ている事がほとんどですので、代金決済と同時に株式の権利が移動するという特約を定めてこの段階で譲渡契約を締結してしまう場合も多いと思います。

 2 譲渡承認の請求

株式の譲渡を希望する株主が、会社に対して次の事項を記載して株式譲渡承認請求書を提出します。

記載すべき事項
・譲渡しようとする株式の種類及び数
・譲渡人の氏名又は名称
・会社が譲渡の承認をしない場合に買取を請求する場合にはその旨

 3 譲渡の承認

定款に定められた譲渡承認機関で譲渡承認の可否を決議します。

譲渡承認機関が株主総会の場合には、株主総会の招集手続きを経て株主総会を開催します。
会社が譲渡承認の請求を受けた場合には、2週間以内に譲渡を承認するか否かの決議(普通決議)を行い、譲渡承認請求をした株主に通知をしましょう。

なお、2週間以内に株主に通知をしなかった場合には、譲渡の承認があったものとみなされてしまいます。

4 譲渡承認の通知

譲渡を承認決議の内容を株主に通知します。

 なお、株式の譲渡を承認しない旨の決定をしたときは、株主総会の特別決議により、会社が買い取る旨の決定をするか又は株式を買取る者を指定する必要があります。

 5 譲渡契約の締結

譲渡の当事者間で譲渡契約を締結します。
譲渡の合意は口約束でも成立しますが、後日のトラブルを防止するため必ず譲渡契約書を作成しましょう。

 6 代金決済

譲渡契約により定められた日時に譲渡対価の支払いをします。

 ※株券発行会社の場合には、譲渡人から譲受人に株券を交付します。
株券を発行していない場合でも株券を発行して交付する必要があります。

7 株主名簿の名義書換請求

代金決済が完了し、株主が変わった後に、譲渡人と譲受人が共同して会社に対して株主名簿の書換を請求します。

 ※株券発行会社の場合には、株券を提示して譲受人の単独で名義書換の請求ができます。

 8 株主名簿の書換

名義書換請求をうけて、会社は株主名簿の書換を行います。

9 株主名簿記載事項証明書の交付

譲渡人から株主名簿記載事項証明書の交付を請求された場合には、株主名簿記載事項証明書を交付します。

 

株式譲渡にあたり必要な書類

株式譲渡に関して必要となる書類は下記のとおりです。
※譲渡承認期間は株主総会である場合(取締役会を設置しない会社)

・株式譲渡契約書
・株式譲渡承認請求書
・株式譲渡承認通知書
・臨時株主総会招集通知
・臨時株主総会議事録
・株式名義書換請求書
・株主名簿記載事項証明書交付請求書
・株主名簿記載事項証明書

 

株式譲渡と税金

株式を譲渡した場合に、譲渡益が発生する場合には譲渡所得税がかかりますが、適正な価額で譲渡を行えば税金はかかりません。しかし、適正な価額はいくらなのかという事は難しい問題です。
適正な価額と大きく乖離した価額で譲渡があった場合には、譲受側に思わぬ課税がされる可能性もあります。

株式譲渡をされる際には、顧問税理士や会計士等の専門家の関与があった方が安心です。

 

 まとめ

株式の譲渡が行われた場合でも、株主の移動は登記されている事項に変更はないため、登記申請は不要です。譲渡当事者と会社において手続きを行うだけですので、法務局などの役所は関与しません。そのため、手続きを安易に考えている方もいらっしゃいます。
外部の目がないということは、手続きの正当性をチェックする機会がないということでもあります。
手続きに関して少しでも不安がある場合には、専門家にご相談されることをお勧めします。

参考:スタートアップM&Aや資本政策・資金調達を助言する専門会社「株式会社ファイナンス・プロデュース」
https://finance-produce.com/ 

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