株式会社の基本原則を定める定款の変更は、企業活動の今後の指針を決めるためにも重要です。 しかし、その手続きは複雑で、不備があると法的なトラブルにつながる可能性もあります。
今回は、定款変更に必要な株主総会での決議、議事録作成、そして法務局への登記という一連の流れを、注意点とあわせて詳しく解説します。定款の記載内容とは?
定款とは、会社の基本ルールを定めたものです。株式会社を設立する際、必ず作成する必要があります。
定款は、以下のように大きく分けて3つに分類されます。 ・絶対的記載事項 ・相対的記載事項 ・任意的記載事項 それぞれ詳しく解説していきます。1 絶対的記載事項
「絶対的記載事項」とは、会社法上、例外なく記載しなければならない重要な事項です。
下記の5つが、絶対的記載事項にあたります。 ・目的
・商号
・本店の所在地
・設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
・発起人の氏名又は名称及び住所 引用:株式会社の設立手続(発起設立)について|法務省2 相対的記載事項
「相対的記載事項」とは、会社法上、定款に定めることによって初めて法的効力を持つ事項です。
会社法第28条により定款の定めが必要なものを「変態設立事項」といい、相対的記載事項は、
変態設立事項とそれ以外の2種類に分けられます。 変態設立事項 ・金銭以外の財産を出資する者の氏名又は名称、当該財産及びその価額並びにその者に対して割り当てる設立時発行株式の数
・株式会社の成立後に譲り受けることを約した財産及びその価額並びにその譲渡人の氏名又は名称
・株式会社の成立により発起人が受ける報酬その他の特別の利益及びその発起人の氏名又は名称
・株式会社の負担する設立に関する費用 それ以外 ・株式の譲渡制限(会社法第107条第2項第1号)
・取締役会、監査役等を置くことができる旨(会社法第326条第2項)
・存続期間又は解散の事由(会社法第471条第1号、第2号)
・公告方法(会社法第939条第1項) 等 引用:株式会社の設立手続(発起設立)について|法務省3 任意的記載事項
「任意的記載事項」とは、定款に記載できる事項です。会社法で必ず書く必要のある事項(絶対的記載事項)や、書かないと効力がない事項(相対的記載事項)以外の、会社法の規定に違反しない事項を指します。
具体的には、下記の4つが任意的記載事項にあたります。 ・定時株主総会の招集時期
・株主総会の議長
・取締役や監査役の員数
・事業年度 等 引用:株式会社の設立手続(発起設立)について|法務省定款変更の流れと方法について
定款変更の流れとしては、以下のような手順となります。一部手順が不要な場合もありますので、事前に確認が必要です。 1.株主総会の特別決議 2.株主総会の議事録作成 3.変更登記の申請及び税務署長等への届け出 4.変更定款の保存 定款変更の効力が発生する時期は、原則として株主総会の特別決議で変更の決議が成立した時点で生じます。
それぞれ詳しく解説していきます。1.株主総会の特別決議
まずは、株主総会の特別決議です。
株主総会の決議があれば定款の変更が可能なため、より厳格な要件を満たす決議である特別決議を行います。
特別決議とは、原則として以下の2つの要件を満たす必要があります。 ・過半数の株主が出席していること
・出席した株主の3分の2以上の賛成があること ※普通決議の場合、過半数の出席かつ過半数の賛成があればよい2.株主総会の議事録作成
次に、株主総会の議事録を作成します。
議事録は、株主総会の内容を証明する重要な書類であり、会社法によって作成と保管が義務付けられています。
記載内容に特に決まりはありませんが、一般的には以下の通りです。 ・開催日時及び場所
・出席株主及び議決状況
・議決結果
・定款変更点
・議事録作成者の氏名 法務局のWebサイトから記載方法やテンプレートをダウンロード可能です。
ぜひ、参考にしてみてください。 参考:商業・法人登記の申請書様式|法務局3.変更登記の申請及び税務署長等への届け出
続いて、変更登記の申請及び税務署長等への届け出を行います。
届け出は必ずしも必要ではありませんが、変更する項目によってそれぞれへの届け出が必要です。
例えば、変更登記の申請は、会社の商号(社名)の変更など、登記事項に変更が生じた場合。税務署長等への届け出は、納税地の変更など、税務署や都道府県税事務所などに通知が必要な事項に変更があった場合、必要になります。 どちらも変更が生じてから原則として2週間以内とされているので、不備のないように事前にしっかりと準備を進めておきましょう。4.変更定款の保存
最後に、変更定款の保存が必要になります。
定款を変更した場合、変更後の最新の定款だけでなく、変更の履歴がわかるように議事録などの関連書類を一緒に保存します。定款変更には登記変更も必要な場合がある
前項でも説明したとおり、定款変更には登記の変更も必要な場合があります。
具体的には下記の項目です。 ・会社名(商号)
・事業内容
・本店および支店の所在地
・資本金額
・発行可能株式数および種類
・公告方法について あくまで一部ですので、登記の変更が必要かどうかを事前に確認しましょう。定款変更時の注意点
定款変更する際には、いくつかの注意点があります。公証人の認証は必要ない
定款変更をする際は、公証人の認証は必要ありません。
会社を設立する際は、定款を作成しただけでは効力はなく、公証人の認証後に法的効力が発生しますが、
会社を設立後であれば、認証の必要なく効力が発生します。
混同しないように気を付けましょう。申請期限がある
申請には期限があるので、期間内に提出できるよう事前準備が必要になります。
前項で、変更が発生した時点から2週間以内に提出しなければならないと述べましたが、これを違反すると、裁判所から100万円以下の過料に処される可能性があります。登録申請には登録免許税がかかる
登録申請には、登録免許税がかかります。
登記する項目によって費用は変わりますが、申請1件について概ね3万円の登録免許税を納める必要があります。
詳しい費用については、下記国税庁のホームページをご確認ください。 参考:登録免許税の税額表|国税庁定款変更は書面決議でもできる
定款変更は、特別決議を行わなくても「書面決議」という方法での変更も可能です。
特別決議より簡単に済ませられる方法として非常に便利ですので、詳しく解説していきます。書面決議とは
書面決議とは、株主総会のように実際に会議の場に集まる必要はなく、書面や電磁的方法(メールなど)によって議決できる方法です。
議決権を持っている全員から、書面又は電磁的記録により可決内容の同意を得られると、株主総会決議で可決されたとみなすことができます。
特別決議に必要な過半数の出席などの心配なく定款の変更が可能なため、非常に便利な方法です。書面決議で定款変更する場合の注意点
書面決議は簡略されており、便利な方法ではありますが、定款変更する場合には以下の点に注意が必要です。 ・全員の同意が必要 ・議案の案内分と新旧対照表を、全ての株主へ発送する必要がある 特別決議の可決条件は「出席した株主の3分の2以上の賛成があること」に比べ、書面決議は「全員の同意」が必要になります。
つまり、1人でも反対意見でると、決議は通らなくなるのです。 また、質問や意見交換の場がないため、変更点などを詳しく記載した「新旧対照表」を案内文と共に送付する必要があります。
書類決議のつもりが、同意が得られずに特別決議を開くことになる、なんてこともありますので事前準備をしっかりと行いましょう。まとめ
定款を変更するためには、特別決議や書類決議が必要であることや、登記の流れ、費用についても解説してきました。
定款変更の内容によって登記免許税の費用が変わる点や、2週間以内に登記申請をしなければ、
100万円以下の過料に処される可能性があることにも注意が必要です。 しかし、いざ申請を行おうとしても、変更点がどの項目に当てはまるのか、2週間以内に手続きを行えるのか、ご不安な方も多いのではないでしょうか。 YOU司法書士法人では、企業法務・商業登記に特化して業務を行っており、豊富な業務実績と実務ノウハウを駆使した法務サポートを行っています。
定款変更登記でお悩みの際は、ぜひ1度ご相談ください。その他の関連コラムはこちら