企業が資金調達や経営を行う際、株式を発行するのは一般的です。通常、株式には普通株式がありますが、それ以外にも「種類株式」という特別な株式があります。種類株式は、特定の権利や条件を設定することができ、企業が柔軟に株主を募るための重要なツールです。

本記事では、種類株式の基本から、9つの種類、さらにはそれらを活用する方法について詳しくご説明します。種類株式についてよく知らない方にも分かりやすく解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。

種類株式とは?

まず、「種類株式」という言葉を聞いたことがない方もいるかもしれません。種類株式とは、株主に与える権利や条件に特別な制限や優先を設けた株式のことです。普通株式(通常の株式)は、すべての株主に平等な権利が与えられますが、種類株式はその権利に差をつけることができます。

例えば、「普通株式を持っている株主には配当が平等に支払われるが、種類株式の株主には優先的に配当を支払う」というように、企業は種類株式を使って、株主に異なる条件を付与することができます。これにより、企業は資金調達をしやすくしたり、株主のニーズに応えたりすることができるのです。

種類株式には、会社法で定められた9つの種類があります。それぞれの種類には異なる権利が付与されており、企業のニーズに合わせて柔軟に活用することができます。

9種類の種類株式

会社法に基づき、種類株式には次の9つがあります。それぞれの特徴と、どのように活用されるのかについて詳しく見ていきましょう。

配当優先株式

特徴: これは、普通株式よりも先に配当を受け取ることができる株式です。企業が利益を上げた際に、配当優先株式の株主には、普通株式よりも優先的に配当金が支払われます。
活用例: 投資家が安定した収益を求めている場合に有効です。企業は、優先的に配当を受けたい投資家を引きつけるために発行することがあります。

残余財産優先株式

特徴: 会社が解散したり、清算したりする際、残った財産を優先的に分けてもらえる権利が付与される株式です。
活用例: 資本回収の可能性を高めるため、投資家に対して安定的な収益を提供したい場合や、資金調達を円滑に進めるために活用されます。

議決権制限株式

特徴: 株主は普通株式を持っていれば議決権を行使できますが、議決権制限株式は、議決権を制限したり、行使したりできない場合があります。
活用例: 経営に積極的に関与したくないが、配当を重視したい親族の株主や投資家に発行されます。

譲渡制限株式

特徴: この株式は、株主が他の人に譲渡する際に、会社の承認を得なければならない株式です。
活用例: 中小企業が、外部の第三者による経営への過度な干渉を防ぐために利用することがあります。

取得請求権付株式

特徴: 株主が、会社に対して自分の株式を買い取らせたり、別の株式と交換させたりすることができる株式です。
活用例: 投資家が株式の買い取りを会社に求められるため、事前に現金や他の株式との交換条件を定めておくことが可能です。

取得条項付株式

特徴: 特定の条件が満たされたとき、会社が株主から株式を強制的に買い取ることができる株式です。
活用例: 例えば、株主が死亡した場合に株式を相続させず、会社が買い取ることができます。

全部取得条項付株式

特徴: 会社が株主総会の特別決議を経て、特定の種類の株式をすべて買い取ることができる株式です。これにより、少数株主を排除することが可能になります。
活用例: 企業が他の企業を完全に支配したい場合や、少数株主の影響を排除したい場合に有効です。

拒否権付株式(黄金株)

特徴: この株式を持っている株主は、特定の決議に対して拒否権を持つことができます。
活用例: 重要な経営判断に対して、一定の株主が影響力を持ち、誤った決定が行われないようにするために利用されます。

役員選任解任権付株式

特徴: この株式を持つ株主は、取締役や役員の選任や解任に関与する権利を持ちます。
活用例: 企業経営に強い関心がある株主が、経営陣の選任や解任に影響を与えたい場合に使用されます。

種類株式の発行によるメリット

種類株式を発行することで、企業にはいくつかのメリットがあります。具体的には次の3つです。

資金調達のしやすさ

投資家が望む条件に合わせた株式を発行することで、企業はより多くの資金を調達できます。たとえば、配当優先株式や議決権制限株式は、投資家にとって魅力的な条件となり、資金を集めやすくなります。

投資家のリスク軽減

投資家は、リスクに応じた株式を選ぶことができます。例えば、優先配当株式や取得請求権付株式を選べば、万が一企業の経営が不安定になった場合でも、リスクを軽減できます。

経営への過度な干渉の防止

譲渡制限株式や取得条項付株式を活用することで、外部の第三者が企業に過度に干渉することを防げます。これにより、企業が意図した通りに経営を進めることができます。

種類株式の活用事例

種類株式は実際の企業経営にも有効に活用されています。ここでは代表的な2つの活用事例をご紹介します。

事業承継時の黄金株(拒否権付株式)の発行

事業承継を行う際、後継者に不安がある場合や、引退後も経営に関わりたい場合に黄金株を発行することがあります。黄金株を持つことで、後継者が経営判断を誤った場合に拒否権を行使し、企業の舵取りを守ることができます。

少数株主の排除(スクイーズアウト)

企業が全株式を買い取る権利を持つ「全部取得条項付株式」を発行することで、少数株主を排除することが可能です。これにより、経営権を強化し、企業の意思決定がスムーズになります。

まとめ

種類株式は、企業が株主に特別な条件を付与することで、資金調達や経営を柔軟に行うための重要なツールです。さまざまな種類があり、それぞれ異なる権利や条件が設定されています。企業はこれらをうまく活用することで、投資家のニーズに応えたり、経営の安定性を高めたりすることができます。

種類株式を理解することで、株主や投資家としても賢い判断をすることができ、企業経営にも役立てることができるでしょう。

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