今回は、株式会社の役員について解説します。
株式会社における役員
株式会社における機関は、次の5つがあります。
会社法では、(1)~(3)を「役員」と定義しています。
さらに、役員と(4)執行役、(5)会計監査人を含めて「役員等」と定義しています。
会社における役職で「執行役員」というものがありますが、
会社法の中では、執行役員という機関は、存在せず。
使用人(従業員)の1役職という立場になります。
一方、指名委員会等設置会社では、「執行役」というものがあります。
こちらは、会社法上の機関で、指名委員会等設置会社ではない会社の取締役と同じような役割を担っています。
株式会社の機関
- 取締役
- 監査役
- 会計参与
- 執行役
- 会計監査人
それでは、各機関を簡単に解説します。
(1)取締役
すべての株式会社において必須の機関となります。
中小企業においては、株主=代表取締役といった場合もありますが、取締役は、株主から経営の専門家として株式会社の経営を委任されている者です。
取締役の中から選定される代表取締役は、株式会社を代表して業務に関する一切の裁判上または裁判外の行為をなす包括的な権限を有します。
(2)監査役
取締役の職務の執行を監査する機関となります。
業務監査では、業務執行の適法性について監査し、会計監査では、株主総会に提出される計算書類等について監査をします。
(3)会計参与
取締役と共同して計算書類等を作成する機関となります。
税理士、公認会計士の専門性を活かして中小企業の計算書類等の適正を確保することを目的として、会社法において導入された機関です。
(4)執行役
指名委員会等設置会社における独自の機関となります。
指名委員会等設置会社においては、取締役は業務執行を行わず、取締役会の構成員として、業務の決定、監督を行います。
そのため、取締役に代わる業務執行の機関として、執行役が設けられます。
執行役の中から選定される代表執行役は、株式会社を代表して業務に関する一切の裁判上または裁判外の行為をなす包括的な権限を有します。
(5)会計監査人
会社法における大会社では、必須の機関となります。
主に監査法人が会社の計算書類等について、その内容が会計基準に照らして妥当であるかといった点を監査します。
ポイント
世間一般でしようされている、「会長」「社長」「専務」「常務」は、会社法に規定されているものではなく、法律上の明確な定義はありません。
そのため、その権限は、それぞれの会社により異なります。
「社長」という役職や呼称がついていたとしても、必ずしも、会社の代表権があるとは限らないのです。
つまり、代表取締役社長ではなく、取締役社長という場合もあります。
ただし、実際には、会社の代表権がなかったとしても、代表取締役以外の取締役に会長、社長、副社長など、会社を代表する権限を有するものと認められる名称を付した場合には、当該取締役がした行為について、責任を問われる場合があります。(表見代表取締役)
役員の任期について
株式譲渡制限のある会社では、定款で定めることにより取締役(監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社を除く)、監査役、会計参与の任期を伸長することができます。
その最大のメリットは、役員の改選にかかる手間とコストの削減です。
一方で、株主と経営者(取締役)が分離している場合には、交代が難しくなるというデメリットがあります。
株主総会の決議によって解任することもできますが、解任された者は、その解任について正当な理由がある場合を除き、解任によって生じた損害(本来得られたはずの役員報酬など)の賠償を請求することができます。
そのため、任期の伸長には検討が必要です。