お客様より、取締役と監査役が変わったので登記して欲しいとのご依頼を頂きました。
そのお客様は、過去に一度も登記をしたことが無いという事です。
登記簿を拝見すると、役員に関する履歴は、取締役は、平成15年に就任そして監査役は、平成17年に就任のみ。
つまり10年以上役員に関する登記をしていませんでした。
会社法の施行により役員(取締役・監査役など)の任期は、10年まで伸長することができるようになりました。(株式の譲渡制限のある会社に限ります。)
たとえ、役員の任期が10年に伸長されていたとしても、数年前に任期が切れてしまっています。
任期が切れた役員について
役員の任期が終わってしまうとその役員の地位はどうなるのでしょうか
その会社の役員が不在になってしまうのでしょうか
会社法には、このような場合に備えた規定があります。
会社法第346条
任期の満了又は辞任により退任した役員は、新たに選任された役員(が就任するまで、なお役員としての権利義務を有する。(通称:権利義務役員)
今回の事例では、平成17年の定時総会の終了時点で取締役の任期が満了、平成21年の定時総会で監査役の任期が満了しています。その後は、権利義務役員として後任の役員が就任するまで各役員の地位が続いています。
また代表取締役も同様で代表取締役も権利義務役員となります。
対応方法について
お客様のお話を伺うと、監査役と取締役の一部が辞任して、後任の方が就任されるとの事です。
権利義務役員は、辞任をすることができません。
辞任とは、任期の途中で役員の地位を辞することです。
権利義務役員は既に任期が終了して、法律によりその地位を与えられているため辞任が認められないのです。
そのため、まずは今までの役員の登記を整理する必要があります。
状況により二つの対応方法があります。
①役員の改選期に役員の選任が行われていたが登記申請がなされていなかった。
役員が選任された旨の記載がある議事録を使用して順次、役員変更登記を申請します。
なお、過去の分すべてを同時に申請することも可能です。
②そもそも役員の選任がされていなかった。
役員全員が権利義務役員となっていますので、早急に臨時株主総会を開催し、後任の役員を選任する必要があります。
その後、交代する役員の辞任と就任登記をすることとなります。
今回は、過去の議事録を調査して、任期の伸長を考慮して順次、過去の役員変更登記を行いました。
まとめ
お客様のお話を伺っていると、役員について任期があることをご存じでない方や、任期があることは知っているが、役員のメンバーが変わらなければ登記は不要と思われている方がいらっしゃいます。
役員の変更登記を怠った場合には、過料が課される場合があります。期間の経過に従って過料の額も高額化するおそれがあります。10年以上登記を怠っていた場合には、10万円を超える過料が科されたという例もあります。
役員の変更登記は下記の場合において必要となります。
- 役員が就任した時、辞任した時、退任した時
- 役員が再任(重任)した時
- 役員を解任した時
- 役員が欠格事由に該当した時、死亡した時
今一度ご確認されることをお勧めします。
費用について
報酬 | 役員の変更登記 |
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登録免許税 | 3万円(資本金が1億円以下の場合は、1万円) |
手続き内容 |
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