こんにちは、YOU司法書士事務所です。
2024年10月より、代表取締役等住所非表示措置という制度が施行されます。
これは、株式会社に限り商業登記簿等に表示されている代表取締役等の住所を一部非公開にするという制度ですが、なぜこのような制度が必要になったのでしょうか。
今回のコラムでは、法律上での代表取締役の住所の取扱いや、住所変更時の手続きについて分かりやすく解説していますので、ぜひ最後までお読みください。
代表取締役の住所の登記は必要か
株式会社の代表取締役や代表執行役、代表清算人(以下「代表取締役等」といいます。)の住所は、会社法によって登記しなければならないと定められています。
この代表取締役等の住所とは、代表取締役等個人の居住地のことを指します。
代表取締役等の住所を必要とする理由
代表取締役等の住所を必要とする理由は様々ありますが、主な理由は以下の3点です。
- 会社の代表者を特定する重要な情報であるため
- 会社の信用に繋がる場合があるため
- 登記未申請の場合の過料や、訴訟時の連絡先として使用されるため
そもそも商業登記制度は、全ての人に会社の情報を公開することで会社の信用を獲得すること、取引相手が安心して取引できるように定められたものです。
そのため、会社情報のひとつである代表取締役等の住所は、自社イメージを落とさないためにも、きちんと登記しておく必要があると言えるでしょう。
代表取締役等の住所が変わったら変更申請が必要
代表取締役等の住所が変わった場合は、2週間以内に変更申請が必要です。引越しなどで代表取締役等の居住地が変わった場合は、個人の住所変更手続きと併せて商業登記の変更も忘れずに行いましょう。
また、住所変更が登記簿に反映されるまでには、申請から2週間ほどかかるとされています。そのため、融資や大きな取引が予定されている場合は、それらに影響のないスケジュール管理が求められます。
なお、株式会社において代表取締役以外の役員は登記対象ではないため、その他の役員は引越しをしても登記の変更申請は不要です。
補足として、有限会社の場合は代表取締役の他、平取締役や監査役の変更申請が必要です。
また、合同会社には代表取締役という役職はないものの、代表社員と職務執行者の住所が変わった場合に変更申請が必要となります。
代表取締役等の変更登記をしない場合のリスク
代表取締役等の住所変更に伴う変更登記をしなかった場合、以下のようなリスクが考えられます。
・100万円以下の過料が科される
・他の登記が行えないなど、別の手続きに影響を及ぼす可能性がある
特に過料については、変更時期が遅くなるほど金額が大きくなる可能性が高いため、万が一忘れていたとしても、なるべく早いタイミングで変更申請を行いましょう。
代表取締役の住所を登記してもプライバシーや個人情報は守られる?
登記簿謄本は、手数料さえ払えば誰でも取得することができるため、代表取締役の住所は不特定多数の人に公開されている状態です。
さらに、登記簿には代表取締役等の住所のみならず名前も記載されるため、代表取締役等のプライバシーや個人情報が守られているとは言い難い状況と言えるでしょう。
代表取締役等の住所を非表示や省略して登記できる?
代表取締役等のプライバシーや個人情報を守るためにも、住所を非表示や省略することはできないかと考える方も少なくないでしょう。
しかし、残念ながら代表取締役等の住所を非表示にすることはできません。
ただし、マンションなどの集合住宅に限っては、住所の一部を省略して登記できる可能性があります。
なぜなら、登記簿に記載するのは「号(住居番号)」までであり、方書(マンション名や部屋番号)は登記不要とされているためです。
代表取締役等の住所を省略するデメリット
集合住宅に限っては住所の一部を省略できる可能性があると説明しましたが、住所を省略することで以下のようなデメリットもあることに注意しましょう。
- 郵便物が届かない可能性がある
- 法人口座を開設する際に、審査が厳しくなるケースもある
公的機関や金融機関からの郵便物は、会社に問い合わせず登記簿に記載されている住所へ送付することがあります。その際に住所が省略されていると書類等が届かずに、会社に不利益をもたらす可能性が考えられます。また、集合ポストの場合は誤配の確率も高まります。
また、個人のプライバシーがある程度守られる一方で、会社としての信用が得られにくくなることや公的手続きが煩雑になることが懸念されます。
【2024年10月】登記簿における代表取締役等の住所非公開措置の開始
これまで解説してきたとおり、代表取締役等の住所が登記されることで個人の居住地が公開され、不特定多数の人が代表取締役等個人の住所を閲覧することが可能な状況です。
集合住宅の場合は省略した住所を登記できますが、戸建てに居住している場合には成す術がありません。
このような現状を鑑み、法務省は2024年10月1日より、登記簿における代表取締役等の住所非公開措置を施行します。この制度を利用することで、登記簿や登記情報提供サービス等に表示す
る代表取締役等の住所は最小行政区画(市区町村)までに限定することが可能となりました。
ただし、この制度を利用するにあたってのデメリットもあるため、別ページで解説している本制度に関するコラムもぜひご覧ください。
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