「社長=会社」ではない理由

「社長=会社」ではない理由

なぜ会社を支配しているのは社長とは限らないのか

会社経営について話をしていると、

「うちの会社は私の会社です」

という言葉を耳にすることがあります。

もちろん、その気持ちはよく分かります。

創業者であれば、

  • 資金を出した
  • 営業して顧客を作った
  • 従業員を雇った
  • 会社を大きくした

という自負があるでしょう。

実際、多くの中小企業では、社長が会社の中心です。

しかし、

法律上も、構造上も、

「社長=会社」ではありません。

むしろ、この違いを理解しているかどうかが、

  • 事業承継
  • 株式問題
  • M&A
  • 経営権

を理解する出発点になります。

なぜ多くの経営者は「社長=会社」だと思うのか

その理由はシンプルです。

中小企業では、会社と社長が一体化していることが多いからです。

営業も社長。採用も社長。

資金調達も社長。重要判断も社長。

顧客も、取引先も、従業員も、

会社ではなく社長を見ています。

そのため、経営者自身も

「会社=自分」

という感覚を持つようになります。

しかし、これは実態の話です。

法律の話ではありません。

ここを区別しないと、

経営権や株式の問題を見誤ります。

個人事業と会社は何が違うのか

この違いを理解するためには、

まず個人事業と会社の違いを見る必要があります。

個人事業の場合、事業主本人がすべてです。

所有者
経営者
意思決定者
が同じ人です。

つまり、「私=事業」です。

一方で会社は違います。
会社は、法律上、独立した存在です。

これを法人格と呼びます。

会社を設立した瞬間、
会社は社長とは別人格になります。

つまり、
社長個人と会社は別の存在です。

ここが個人事業との決定的な違いです。

法人格とは何か


法人格とは、
法律上の人格です。

会社は、人ではありません。

しかし、
法律上は一人の人間のように扱われます。

例えば、契約をする。お金を借りる。
土地を所有する。訴訟を起こす。

これらは、
社長ではなく会社が行っています。

つまり、
会社は独立した存在なのです。

社長が会社を作ったとしても、
会社そのものにはなれません。

ここを理解することが、
経営構造を理解する第一歩になります。

社長は会社を所有しているのか


ここで一つの疑問が生まれます。

社長は会社のオーナーではないのか。

実は、社長とオーナーは別です。

会社を所有しているのは、社長ではなく株主です。

株式会社では、
株式を持っている人が会社の所有者になります。

つまり、法律上は社長より株主の方が強い立場なのです。

株主とは何か

株主とは、会社の持分を持つ人です。

そして、株主には議決権があります。

議決権とは、
会社の重要事項を決める票です。

誰を社長にするか。取締役を誰にするか。
会社を売却するか。増資するか。

こうした重要事項は、
最終的には株主が決めます。

つまり、
会社を支配する力の源泉は、社長ではなく株主なのです。

社長が一番偉いとは限らない


中小企業では、
社長が株主でもあることが多いため、
違いが見えにくくなっています。

しかし、両者は本来別の立場です。

例えば、
創業者が株式の過半数を失った場合。

社長を続けたくても、
株主総会で解任される可能性があります。

逆に、社長ではない株主が、
会社の方向性を決めることもあります。

つまり、会社は
肩書で動くのではありません。

権利で動きます。

そしてその権利の中心にあるのが、株式と議決権です。

経営権とは何か


ここで重要になるのが、経営権です。

経営権とは、会社を動かす最終意思決定の力です。

しかし、経営権は一つではありません。

実際には、二つの権限が存在します。

業務執行権、意思決定権です。

業務執行権は、社長や取締役が持ちます。

日常業務を進める権限です。

一方で、
意思決定権は株主が持ちます。

つまり、
社長と株主が違う人であれば、
経営権も分離されます。

この構造を理解しないまま、
事業承継やM&Aを考えることはできません。

なぜ事業承継で問題が起きるのか


事業承継では、
代表取締役だけ変更されることがあります。

しかし、株式は先代が持ったまま。

この状態だと、後継者は社長ですが、
会社を支配していません。

重要事項は、依然として先代が決めます。

結果として、
経営が二重構造になります。

これは非常によくある問題です。

事業承継が難しいのは、社長交代ではなく、
支配構造の移転だからです。

「社長=会社」という誤解が生む問題


多くの中小企業では、社長=会社
という感覚が存在します。

しかし、この考え方が強すぎると、
様々な問題を生みます。

株式を軽視する。

ガバナンスを整えない。

後継者へ権限を移さない。

結果として、
将来の承継やM&Aで大きな障害になります。

会社は社長のものではありません。

会社は、株主、取締役、従業員、
取引先、顧客、様々な関係者によって成り立つ組織です。

だからこそ、
「社長=会社」
という発想から、
「会社には構造がある」
という発想へ切り替える必要があります。

まとめ

多くの中小企業では、
社長と会社が一体化しています。

しかし、
法律上も構造上も、
社長と会社は別の存在です。

会社は法人格を持ち、
独立した存在として存在しています。

そして、
会社を最終的に支配するのは、
肩書ではなく株式です。

つまり、
会社を理解するためには、
社長を見るだけでは足りません。

株主。
議決権。
経営権。
支配構造。

これらを理解して初めて、
会社の本当の姿が見えてきます。

会社の未来を考えるとき、
まず見るべきなのは社長ではありません。
その会社の構造です。


ー次に読むべき記事
会社の未来は「構造」で決まる
経営構造デザインとは何か
株式構造が会社を支配する理由


これらを読むことで、「社長=会社ではない」という意味が、より立体的に理解できるようになります。

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監修・執筆

松本光平
司法書士 / 経営構造デザイナー

株式・議決権・事業承継・経営権をテーマに、
「会社の未来は構造で決まる」を軸として、経営と法務を横断した情報発信を行っている。

松本光平プロフィール
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